『ユナイテッド93』
2007年01月22日 (月)
9.11においてハイジャックされた4機の航空機のうち、乗客の抵抗によって唯一目的地に到達しなかったと言われているユナイテッド93便。
本作は、あの日、次々と生じたハイジャックに混乱するアメリカ各地の航空管制センターの模様とその時ユナイテッド93便で何が起こっていたのかを、詳細な取材に基づき、徹底したドキュメンタル手法で描いた作品。
とても話題になった作品であったし、いろいろなところで高く評価されていた作品であったのだけど、こういう結末のわかっている、しかもすでに9.11を扱った報道やTVの特番などで展開を知ってしまっている話は、暗澹たる気持ちになるに違いないし、お涙頂戴の描き方だったらいやだなぁという気持ちもあったので、劇場には見に行かなかった。
しかし、想像以上にその描き方は徹底したドキュメンタル手法で、淡々と、ひたすら淡々と再現ドラマのように描かれていた。
また、前半部(93便でテロリストたちが行動を起こすまで)は、いくつかの機と交信不能になり、ワールドトレードセンターに航空機が突っ込む事態が生じて大混乱をきたす各地の管制センターや軍の管制センターの模様、航空局と軍との連絡・連携がスムーズにいかない模様、政府の対応の遅さなどが描かれていて、93便の物語だけが終始描かれているわけではなかった。
そのあたりは予想外であったのだが、話題になることが多かった93便の模様には、それほど衝撃も感慨も感じなかったというのが正直な感想である。
「もし自分が93便の乗客だったら…」とか「自分の家族や友人が乗客だったら…」、そういう見方をすれば、とても怖いしつらいし、また彼らのように勇敢な行動がとれるだろうかと自問自答することになるだろう。
しかし、そういう見方には少し違和感を感じる。
機内の模様は、まるで事実のように描かれてはいるけれど、遺族や関係者の証言や機内からの乗客の電話の会話録音などから再現されているとはいえ、やはり想像であり、あくまで「事実に基づいたフィクション」であるという前提がその原因かもしれない。
以前TVの特番だったか特集だったかで、実際の通話録音を聞いたときに感じた衝撃や感慨に比べると、胸に迫るものがあまりなかったというのが実際である。
ゆえに、私の場合、93便の模様より、必死で管制を行う管制官や混乱する管制センターや軍や政府の対応の模様の方が興味深かった。(興味深いというのは、適当な表現ではないかもしれないが)
しかし、複数の管制センターの様子がかなり早いテンポで描かれていたため、今描かれているのがどこの管制センターなのか少々分かりづらかったのが残念だった。
そして、なぜこの映画をつくったのだろうという疑問が生じた。
あの日のことを忘れないため、事実はこういうふうであったと多くの人に知らしめるため、残すため…なのだろうか?
なら、映画ではなくTVドラマでもよかったんじゃないかと思ってしまう。
なぜ「映画」だったのか、正直ちょっとわからない。
映画でなければ描けない描き方をしているわけでもないしなと思ってしまったのだが…。
ただ、93便の模様でひとつ印象的なことがあった。
目的を達成しようとするテロリストたち、それを阻止しようとする乗客たち、双方ともに「神に祈りを捧げる」場面である。
乗客たちはキリストに、テロリストたちはアラーに。
もちろん実際にそうだったかどうかはわからない。想像で描かれていることだと思うのだが、「宗教とは何なのか…」と思索せずにはいられない場面であった。
決してこの作品自体やこの作品の手法を否定するわけではないし、衝撃的であった歴史的事実の一端を知るという意味においては見て損はない作品だとは思うが、映画に対する評価と事実に対する感慨とは別であることを認識すべきであろうと思う。
オススメ度 3
(5=絶対オススメ! 4=観て損はない。 3=まずまずかな。 2=観てもいいけど、面白くないかも。 1=観たらお金と時間の無駄。お好きな映画だったらゴメンなさい。)
本作は、あの日、次々と生じたハイジャックに混乱するアメリカ各地の航空管制センターの模様とその時ユナイテッド93便で何が起こっていたのかを、詳細な取材に基づき、徹底したドキュメンタル手法で描いた作品。
とても話題になった作品であったし、いろいろなところで高く評価されていた作品であったのだけど、こういう結末のわかっている、しかもすでに9.11を扱った報道やTVの特番などで展開を知ってしまっている話は、暗澹たる気持ちになるに違いないし、お涙頂戴の描き方だったらいやだなぁという気持ちもあったので、劇場には見に行かなかった。
しかし、想像以上にその描き方は徹底したドキュメンタル手法で、淡々と、ひたすら淡々と再現ドラマのように描かれていた。
また、前半部(93便でテロリストたちが行動を起こすまで)は、いくつかの機と交信不能になり、ワールドトレードセンターに航空機が突っ込む事態が生じて大混乱をきたす各地の管制センターや軍の管制センターの模様、航空局と軍との連絡・連携がスムーズにいかない模様、政府の対応の遅さなどが描かれていて、93便の物語だけが終始描かれているわけではなかった。
そのあたりは予想外であったのだが、話題になることが多かった93便の模様には、それほど衝撃も感慨も感じなかったというのが正直な感想である。
「もし自分が93便の乗客だったら…」とか「自分の家族や友人が乗客だったら…」、そういう見方をすれば、とても怖いしつらいし、また彼らのように勇敢な行動がとれるだろうかと自問自答することになるだろう。
しかし、そういう見方には少し違和感を感じる。
機内の模様は、まるで事実のように描かれてはいるけれど、遺族や関係者の証言や機内からの乗客の電話の会話録音などから再現されているとはいえ、やはり想像であり、あくまで「事実に基づいたフィクション」であるという前提がその原因かもしれない。
以前TVの特番だったか特集だったかで、実際の通話録音を聞いたときに感じた衝撃や感慨に比べると、胸に迫るものがあまりなかったというのが実際である。
ゆえに、私の場合、93便の模様より、必死で管制を行う管制官や混乱する管制センターや軍や政府の対応の模様の方が興味深かった。(興味深いというのは、適当な表現ではないかもしれないが)
しかし、複数の管制センターの様子がかなり早いテンポで描かれていたため、今描かれているのがどこの管制センターなのか少々分かりづらかったのが残念だった。
そして、なぜこの映画をつくったのだろうという疑問が生じた。
あの日のことを忘れないため、事実はこういうふうであったと多くの人に知らしめるため、残すため…なのだろうか?
なら、映画ではなくTVドラマでもよかったんじゃないかと思ってしまう。
なぜ「映画」だったのか、正直ちょっとわからない。
映画でなければ描けない描き方をしているわけでもないしなと思ってしまったのだが…。
ただ、93便の模様でひとつ印象的なことがあった。
目的を達成しようとするテロリストたち、それを阻止しようとする乗客たち、双方ともに「神に祈りを捧げる」場面である。
乗客たちはキリストに、テロリストたちはアラーに。
もちろん実際にそうだったかどうかはわからない。想像で描かれていることだと思うのだが、「宗教とは何なのか…」と思索せずにはいられない場面であった。
決してこの作品自体やこの作品の手法を否定するわけではないし、衝撃的であった歴史的事実の一端を知るという意味においては見て損はない作品だとは思うが、映画に対する評価と事実に対する感慨とは別であることを認識すべきであろうと思う。
オススメ度 3
(5=絶対オススメ! 4=観て損はない。 3=まずまずかな。 2=観てもいいけど、面白くないかも。 1=観たらお金と時間の無駄。お好きな映画だったらゴメンなさい。)
![]() | ユナイテッド93[UNITED 93] 監督:ポール・グリーングラス 出演:ハリド・アブダラ ポリー・アダムス オパル・アラディン(2006年度作品) ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2006-11-30 by G-Tools |
COMMENT
神
こんばんは。基本的にノンフィクションや戦争ものとかをあえて見る私ですが、ユナイテッド93は封切り前の評論家達の「ドキュメント仕立てで生々しい」とのふれこみに「こりゃ、心が元気な時に見ないと引きずられるかも」と劇場で見れなかったんですよね。
けろにあさんによると「淡々とひたすら淡々と」描かれていたんですね。記録映画として余計な感情移入せずに見られるということでしょうか。
私がけろにあさんの記事を読んで一番興味を持ったのが、
>目的を達成しようとするテロリストたち、それを阻止しようとする乗客たち、双方ともに「神に祈りを捧げる」場面である。
乗客たちはキリストに、テロリストたちはアラーに。
もちろん実際にそうだったかどうかはわからない。想像で描かれていることだと思うのだが、「宗教とは何なのか…」と思索せずにはいられない場面であった。
のところです。そうなんですね。やはりそれぞれの神に祈るんですね。切ないです。「神」とは「宗教」とは、何なのでしょうか。私は祖母が真言密教を得度して霊媒のような事をしていたので、幼い頃から祖母に倣って朝夕のお勤めに付き合っていたからたまたま般若心経や天津祝詞を諳んじることが出来ますが、偏りたくないので、宗教に深入りしないようにしています。親戚・姉妹からの新興宗教の勧誘からも逃れてきました。
みな、「自分とこが一番」というスタンスが嫌なんです。「信じないあなたは可哀相」という所もあります。余計なお世話なのですが。
キリストもアラ−もブッダも素晴らしい。認め合えばいいじゃないか。なぜムキになって排他的になるのか。
でも、キリスト教とイスラム教は歴史的背景上、そうはいかないんでしょうね。
とにかく私は宗教間の争いには圧倒的な無力感を感じます。
けろにあさんによると「淡々とひたすら淡々と」描かれていたんですね。記録映画として余計な感情移入せずに見られるということでしょうか。
私がけろにあさんの記事を読んで一番興味を持ったのが、
>目的を達成しようとするテロリストたち、それを阻止しようとする乗客たち、双方ともに「神に祈りを捧げる」場面である。
乗客たちはキリストに、テロリストたちはアラーに。
もちろん実際にそうだったかどうかはわからない。想像で描かれていることだと思うのだが、「宗教とは何なのか…」と思索せずにはいられない場面であった。
のところです。そうなんですね。やはりそれぞれの神に祈るんですね。切ないです。「神」とは「宗教」とは、何なのでしょうか。私は祖母が真言密教を得度して霊媒のような事をしていたので、幼い頃から祖母に倣って朝夕のお勤めに付き合っていたからたまたま般若心経や天津祝詞を諳んじることが出来ますが、偏りたくないので、宗教に深入りしないようにしています。親戚・姉妹からの新興宗教の勧誘からも逃れてきました。
みな、「自分とこが一番」というスタンスが嫌なんです。「信じないあなたは可哀相」という所もあります。余計なお世話なのですが。
キリストもアラ−もブッダも素晴らしい。認め合えばいいじゃないか。なぜムキになって排他的になるのか。
でも、キリスト教とイスラム教は歴史的背景上、そうはいかないんでしょうね。
とにかく私は宗教間の争いには圧倒的な無力感を感じます。
by なり
◆なりさん
> 記録映画として余計な感情移入せずに見られるということでしょうか。
ドキュメンタリーではないので、記録映画というカンジではないのですが、ドラマチックなつくりではありません。
事件や事故の再現ドラマありますよね、あれのナレーションなし版みたいなカンジとでも言えばいいでしょうか?
ですので、エントリ内にも書いたように、見方にもよると思うのですが、よけいな感情移入をせずに見ようと思えばできると思います。
> キリストもアラ−もブッダも素晴らしい。認め合えばいいじゃないか。なぜムキになって排他的になるのか。
> 宗教間の争いには圧倒的な無力感を感じます。
仰るとおりです。私もそう思います。
人類は、あらゆる生物の中で唯一思考する脳の働きを持っているがために死を恐れ、その恐怖感から逃れるために信仰を生み出したとも言われていますよね。(正確ではないかもですが…)
本はみなそこのはずで、アプローチが違うだけですのにね。
…宗教については、ちょっと勉強してみようと思っています。
(あくまで宗教の歴史や宗教観の勉強で、信仰ではありませぬ。「信仰」にはまったく関心がないもので。)
> 記録映画として余計な感情移入せずに見られるということでしょうか。
ドキュメンタリーではないので、記録映画というカンジではないのですが、ドラマチックなつくりではありません。
事件や事故の再現ドラマありますよね、あれのナレーションなし版みたいなカンジとでも言えばいいでしょうか?
ですので、エントリ内にも書いたように、見方にもよると思うのですが、よけいな感情移入をせずに見ようと思えばできると思います。
> キリストもアラ−もブッダも素晴らしい。認め合えばいいじゃないか。なぜムキになって排他的になるのか。
> 宗教間の争いには圧倒的な無力感を感じます。
仰るとおりです。私もそう思います。
人類は、あらゆる生物の中で唯一思考する脳の働きを持っているがために死を恐れ、その恐怖感から逃れるために信仰を生み出したとも言われていますよね。(正確ではないかもですが…)
本はみなそこのはずで、アプローチが違うだけですのにね。
…宗教については、ちょっと勉強してみようと思っています。
(あくまで宗教の歴史や宗教観の勉強で、信仰ではありませぬ。「信仰」にはまったく関心がないもので。)
by けろにあ
見ました
「ワールドトレードセンター」でニコラス・ケイジのように有名な役者を使ってるわけではないので
ドキュメンタリータッチですんなり観ることができました。
あの管制室の模様や軍の司令部の模様やとても混乱した状況がよくえがかれているし これが危機管理がまるでなっていない日本ならどうだったろうとゾッとします。日本より進んでいるアメリカでさえもあぁなってしまうんですから 大パニックになるでしょうね。
あわせて「華氏911」での 報告を受けた際の呆けたようなブッシュ大統領の顔が浮かんできました・・
全ての悲惨さはここから始まったんですね
そして毎日世界のどこかで起きる自爆テロ。
日本はなんとしても平和でいて欲しいものです
ドキュメンタリータッチですんなり観ることができました。
あの管制室の模様や軍の司令部の模様やとても混乱した状況がよくえがかれているし これが危機管理がまるでなっていない日本ならどうだったろうとゾッとします。日本より進んでいるアメリカでさえもあぁなってしまうんですから 大パニックになるでしょうね。
あわせて「華氏911」での 報告を受けた際の呆けたようなブッシュ大統領の顔が浮かんできました・・
全ての悲惨さはここから始まったんですね
そして毎日世界のどこかで起きる自爆テロ。
日本はなんとしても平和でいて欲しいものです
by ケイ
◆ケイさん
仰るようにコレが自国で起こったら、自分の身に起こったら・・・と思うとゾっとしますよね。
やっぱこの作品って、ソレ狙ってるんでしょうか?
っていうか、ほとんどの場合、そういうふうに見てしまうんでしょうね。
ただ私は、エントリにも書きましたように、ソレってどうよと思っちゃったんで、なんか入り込めなかったんですよね・・・。
仰るようにコレが自国で起こったら、自分の身に起こったら・・・と思うとゾっとしますよね。
やっぱこの作品って、ソレ狙ってるんでしょうか?
っていうか、ほとんどの場合、そういうふうに見てしまうんでしょうね。
ただ私は、エントリにも書きましたように、ソレってどうよと思っちゃったんで、なんか入り込めなかったんですよね・・・。
by けろにあ












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